「知財権をフルに活用した高収益事業」~中小企業の知財戦略成功の秘訣~ 対談
兼子産業株式会社 代表取締役社長 兼子 雄輝 様
IPP国際特許事務所 所長 松下 昌弘
https://www.kanekosangyo.co.jp/index.html
樹脂、金属、段ボールなど様々な材料を組み合わせた工業系梱包材の総合メーカー
2013年以来、新商品の特許、実用新案、商標、意匠の権利化、並びに模倣対策のお手伝いをさせて頂いております。取引先の現場での課題を把握し、その課題に合ったヒット商品を次々に生み出す手腕は素晴らしいです。
知財が参入障壁となることが大切
兼子社長:
弊社の知的財産権に関しましては、権利取得が一番のゴールではなく、後発商品によってマネされないことが重要だと考えております。我々のようなB to B のニッチな商品は大手企業にとっては参入価値がそこまで高くないですが、中小企業には参入される可能性があるので、知的財産権を取得するだけでなく、模倣対策に積極的に取り組んでいるという事をしっかりPRすることが大切だと思っております。
松下:
御社のサイトを拝見すると、とてもわかりやすく知財戦略をアピールされていらっしゃいますね。
知的財産のページを設けたり、商標のⓇも付け、模倣防止協会の支援についてアピールもされています。
このように権利を取得するだけでなく、模倣品に対しての自社の姿勢を見せることが効果的です。
模倣品が登場してきた時は、模倣者も投資をしているため、なんとかして逃げ切ろうとしますが、模倣をしようという段階では、まだ売れるかどうかもわからないので、貴社のホームページをみて、「この企業は模倣したら大変そうだ」と感じさせることが大切だと思います。
特に日本企業の場合は模倣するのはやめておこうという気持ちが働くことが多いです。
・商標マークの例 兼子産業様㏋より https://www.kanekosangyo.co.jp
・模倣防止協会表示による模倣牽制 兼子産業様㏋より https://www.kanekosangyo.co.jp/
自社商品開発があるからこそ本業につながる
松下:
さて、御社はパレット材販売をメインにされていらっしゃいましたが、兼子社長の代になられてから、オリジナル商品を積極的に開発されてますね。売上も伸びていらっしゃいますか?
兼子社長:
はい、自社商品の売上は年々伸びています。
自社商品の開発、販売により接触企業数も増加しており、自社商品の販売活動で獲得した新しいお客様へ本業である木製梱包材の提案を行うという良い流れもできているように思います。
松下:
兼子社長が現場にしっかりと関与されているからこそ、現場の「もっとこうしたら」を解消するためのアイデアが商品として開発されるのですね。また模倣されやすい商品だからこそしっかり知財戦略も取り組んで、売上と利益率をどんどんアップされています。商標戦略もされているので、自社ブランディングにもなっています。
御社は弊所に依頼する前から、知財対策を取り組まれていましたか?
兼子社長:
いえいえ。松下さんと懇親会でお会いしてからです。自社商品を初めて開発、商品化する際に相談させていただいた時、一から知的財産対策のノウハウを教えていただきました。
松下:
知財戦略をされて模倣対策は成功されていますが、他に良い点はありますか?
新たなオリジナル商品を生み出すことと知財戦略は開発者の活力となる
兼子社長:
社内の開発者のモチベーションが格段に上がりました。言われたものをつくるのではなく、1から生み出すこと。それが特許など権利によって、社会的に影響を与える物を自分達でつくりだしているという自信と自覚を持っています。
松下:
知的財産権は国が認めた権利ですので、社内社外で評価をしっかりされることになります。権利をもっているということは、自社ならではの強みとなり、営業ツールとして影響力があります。よってそのようなインセンティブがあるからこそ値引き交渉にもなりにくくなります。
兼子社長:
営業でもお客様への説得材料になりますね。あとメディアに取り上げられやすくなりました。
また弊社はホームページに力を入れておりますので、知財のページを設けて、松下さんのお名前を掲載させていただくことで、専門家がちゃんとついているということをアピールすることが模倣への大きな牽制になっていると思ってます。
・知的財産ページ 専門家表示の例 兼子産業様㏋より https://www.kanekosangyo.co.jp/nocopy/nocopy.html
模倣される前の未然対策の重要性
松下:
未然の模倣対策は、セコムマークのようなものだと思ってます。泥棒が入る前にセコムシールで防犯対策をアピールして、泥棒を牽制していますよね。マネされてから警告すると、大変な時間とお金がかかってしまい、商品によってはそれが売れる時期がすぎてしまうこともあります。
兼子社長:
まさにそうですね。未然防止が大切なんですよね。弊社はこれからも物流現場の安全と効率を考えるような、現場に入り込んでみないとわからないローテクな悩みまで解消する開発商品を提案していこうと思ってます。開発に苦労はありますが、それが他社との差別化になってくると思っています。
そういえば、最近「現場のかゆいところに手が届く商品を開発する会社」として業界内でのブランディングもでき始めているように感じます。
松下:
ニッチだからこそ、御社ならではの強い商品ができあがってくるのですね。今後はお客様の方から「こういうものはつくれないか」という相談もありそうですね。
ぜひこれからも発明商品を開発していただき、弊所としては知財面からできる限りのことをサポートしていきます。
兼子社長:
これからもどうぞよろしくお願いします。
松下:
こちらこそどうぞよろしくお願い致します。本日はありがとうございました!